NHKクローズアップ現代「ルポ 外国人労働者の子どもたちへ〜受け入れ拡大のかげで〜」の放送を受けて

NHKクローズアップ現代「ルポ 外国人労働者の子どもたちへ〜受け入れ拡大のかげで〜」の放送を受けて

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クローズアップ現代の放送を受けて

ACEが実施している日本の児童労働についての調査で、外国にルーツをもつ子どもたちのなかに就学せず、働いている子どもがいることが分かりました。児童労働に従事するリスクに配慮する必要があるグループのひとつであると認識しています。

この外国人労働者の子どもたちの不就学の実態が、2019年9月18日放送のNHKクローズアップ現代「ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~」で取り上げられました。

 

外国にルーツをもつ子どもたちの就学状況

番組では、全国で約2万人の外国籍で義務教育年齢の子どもの就学状況が確認できておらず、8,000人以上が学校に通っていないという調査結果が報告されました。その背景には、①外国籍の子どもは義務教育の対象となっていない、②対策が自治体任せになっている、からだと愛知淑徳大学准教授の小島祥美先生が指摘されました。

岐阜県可児市には、ブラジルやフィリピンから来日して、自動車関連の工場などで働く外国人労働者が多く住んでいます。その子どもたちが学校や友人に馴染めず、小学校や中学校を不登校になったり中退しているという状況がありました。番組に出演されていた可児市在住のお2人が、学校に通っていなかったことについて話されました。

横山ラファエルさん(23歳)は、中学2年生の時に来日して中学校に入りましたが、辞めてしまいました。その後、14歳でアルバイトを始めました。

池長ミツヨシさん(30歳)は、10歳で来日して小学校5年生に編入しましたが、学校に行きませんでした。12歳の時に、お父さんに怒られて家出をしました。友人の家に泊まったり、橋の下に寝たり、ホームレス状態となりました。建築関係の親方に出会い、そこで働き始めました。

★ 学校へ行っても日本語が分からないため、授業がつまらない。外国人ということで、いじめられる。子どもや親が学校を辞めたいと言えば、義務教育の対象となっていないため、学校は強く引き留めることはできません。学校を辞めた後、家にいても仕方がないので、お父さん、お母さんと一緒にお弁当工場で働いていたという14歳の子どもがいたという話などをACEも調査をしているなかで聞きました。

外国人労働者の受け入れ拡大

日本にいる外国人労働者数は、146万人と過去最高を更新しています(厚生労働省、2018年10月)。入国管理法の改正によって、「特定技能(1号と2号)」という在留資格が新設され、2019年4月から施行されました。建設業、宿泊業、外食業、農業、漁業などの14の業種で、今後5年間で約34万人程度の外国人労働者を受け入れる方針となっています。 これまで家族を帯同できる外国人は、永住者・定住者、留学生などに限られていましたが、「特定技能2号」の資格をもつ人は、家族も日本に住むことができ、在留期間の上限も決められていません。ただし、「特定技能2号」は、熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人で建設業と造船・舶用工業に限られた資格です。計5万3,000人の外国人労働者が見込まれています。
つまり、日本語が分からない子どもたちが、これまで以上に多く来日することが予測されます。

移民統合政策指標で日本は、38か国中27位

クローズアップ現代では、移民統合政策指標についても紹介していました。ヨーロッパ、北米などに日本と韓国を加えた38か国について、移民統合政策を8つの政策分野(労働市場、家族呼び寄せ、教育、保健、政治参加、長期滞在、国籍取得、反差別)の167の政策指標によって数値化し、比較しています。
日本は、特に教育(29位)と差別禁止(37位)で低い評価となっています。

子どもの権利が守られていない日本

日本は、国連子どもの権利条約を批准しているにもかかわらず、子どもの権利が守られていない状況が、クローズアップ現代でも明らかになりました。

【教育】
外国籍の子どもが義務教育の対象外であることは、「教育を受ける権利」を保障していないことになります。これについては、2001年に国連人種差別撤廃委員会から日本政府に対して是正するように勧告が出ています。
また、番組では、就学が妨げられている「ヤングケアラー」についても紹介されていました。「ヤングケアラー」とは、本来はおとなが担うような家事や家族の世話を行っている子どものことです。中学3年生のマリアさんは、小さな妹の世話をするために、学校を休みがちになっています。母と叔母が朝5時から働きに出て、帰宅は夜8時頃になることから、マリアさんは学校へ行きたいけれども家族を助けることが当然と考えています。

★他の人の家などで雇用されて家事労働に従事しいている就労最低年齢以下の子どもは、児童労働にあたります。マリアさんの場合は、家族の手伝いをしていることから、児童労働とは言えません。しかし、家庭内の家事であっても、学校に行けないほど過剰な負担であるときは、児童労働に相当するかもしれないと考えられています。

【就労】
労働基準法では、最低就労年齢が15歳(中学校を卒業後)と定められていて、18歳未満の子どもには高所での作業や解体作業など危険有害な労働は禁止されています。番組に出演されていた横山さんや池長さんの就労は、「児童労働」だったと考えられます。 実際、13歳から15歳の日系ブラジル人の子ども12人が部品メーカーなどの工場で働いていたため、岐阜労働基準監督署が岐阜県内の人材派遣会社2社に対して是正勧告を行ったことがあります。

 

岐阜県可児市の取り組み

可児市では、600人の外国籍の子どもに対して8000万円の予算をかけて、子どもの就学を支援しています。地元の学校に通う前に3か月間、日本語や学校のルールを無料で学べる「ばら教室KANI」があります。蘇南中学校では、900人中150人の生徒が外国籍です。4人の通訳が配置され、出席確認や親との連絡を行っています。無断欠席した生徒の家庭を訪問したりして、中退を防いでいます。

文部科学省は、2019年3月に「外国人児童生徒受入れの手引き」を改訂し、「外国人の子供の就学の促進及び就学状況の把握等について(通知)」を県や市の教育委員会に出しました。しかし、外国から来日する子どもが増えるなか、政府は有効な対策を打ち出しておらず、対応は自治体にゆだねられています。対応は市町村によってばらつきがあり、可児市のような取り組みを行っている市町村は多くないと思われます。

外国にルーツをもつ子どもたちに対して、児童労働のリスクへの配慮が必要です

外国人労働者が増え、その子どもたちも増えると、小中学校に通わず「児童労働」に従事する子どもが増える可能性が高くなります。子どもたちが就学し、義務教育を修了できるような政策や支援が必要です。また、親への支援も重要です。日本語が理解できないため支援サービスについて知らない、長時間労働を強いられて支援を求める余裕もない、など状況があると番組からうかがえました。

★ ACEは、外国にルーツをもつ子どもたちを含め、児童労働のリスクがある子どもたちや児童労働に従事している子どもたちの調査を継続しています。そして、日本政府に対して、児童労働問題を一括して所管する部署の設置や児童労働の実態調査の実施と対策の推進を提言しています。

みなさんの周りで、学校へ行っていない子ども、働いている子どもを見かけたら、ACEまでお知らせください。また、国がきちんとした政策を実施するようにお力を貸してください。

ご支援、よろしくお願いします。


NHK クローズアップ現代
「ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~」

 

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  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2019.10.18