日本政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」公表に際してのコメント

日本政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」公表に際してのコメント

Pocket
LINEで送る

2020年10月22日
NPO法人ACE  

Screen Shot 2020-10-27 at 10.54.20日本政府は、『「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)』を2020年10月16日に公表しました。2016年秋に「行動計画」策定を表明してから、4年間にわたってベースライン・スタディ、諮問委員会、作業部会、パブリックコメントなどのプロセスを経てとりまとめられた政府、および関係したステークホルダーの皆さまに対して敬意を表します。  

国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、人権を保護する国家の義務、人権を尊重する企業の責任、救済へのアクセスに関する取り組みという3つの柱で構成された「行動計画」となっています。日本がビジネスにおける人権問題への取り組み促進を表明したことは重要な第一歩ですが、課題も残る内容です。「行動計画」の着実な実施をモニタリングするとともに、5年後の改定に向けて政府に要請を続けていくつもりです。

「ビジネスと人権に関する行動計画」に対するコメントは、次の通りです。

■ 子どもの権利の保護と児童労働が「ビジネスと人権」の課題として明記されたことを評価します
ACEは2018年外務省主催で行われた「ビジネスと人権に関するベースラインスタディ意見交換会」における報告やそれ以降の策定プロセスにおけるパブリックコメントやマルチステークホルダーによる要請書などを通じて、児童労働を含むビジネスにおける子どもの権利の保護について行動計画に明記することを働きかけました。  

「行動計画」では、「子どもの権利条約」、「子どもの権利とビジネス原則」やG20大阪サミットでの「首脳宣言」と労働雇用大臣会合「大臣宣言」における児童労働撤廃へのコミットメントが記載されました。今後行っていく具体的な措置に、児童労働、人身取引、児童買春、性的虐待などへ取り組んでいくことが含まれました。

■ 児童労働への取り組みは明記されたものの十分とは言えません  
ACEは、政府のAlliance 8.7への加盟の検討も申し入れましたが、取り上げられませんでした。Alliance 8.7は、ILO(国際労働機関)が主導し、児童労働を含む持続可能な開発目標8、ターゲット7を推進しているグローバルなパートナーシップですから、日本政府の参加は重要であると考えています。  

また、児童労働撤廃に関する国際協力は行動計画に入っていますが、日本にも存在する児童労働への取り組みについては言及されませんでした。あらゆる形態の児童労働を取り締まるための包括的な法律制定、行動計画策定、所管部署の設置を検討するように意見提出しました。しかし、パブリックコメントへの回答は、「我が国においては、労働基準法、児童福祉法等によって、国内の児童労働撤廃に取り組んでいます」というものでした。さまざまな法律を適用しなければならない現状では、法の空白や抜け道が発生し、子どもを児童労働から守るためには十分とは言えないと考えます。

■ 残された課題について、引き続き検討を要請していきます  
上記に加えて、ACEは重要と考えますが、今回の「行動計画」に反映されなかった点については、引き続き政府に要請していきます。

・「行動計画」の内容を「ビジネスと人権に関する指導原則」および日本が批准している人権に関する国際条約や国際人権基準に基づいたものにすること

・実施状況や「行動計画」の見直しにおいて、市民社会など関係するステークホルダーと協議を行うこと

・国内人権機関や子どもの人権オンブズパーソンなど、裁判所とは別に人権侵害からの救済と人権保障を推進するための国家機関の設置を検討すること

また、ACEが事務局を務める児童労働ネットワークが行った以下のコメントについても、反映されませんでしたので、引き続き政府に要請していきます。

・政府調達手続きにおいて、人身取引、強制労働、児童労働を使用した物品および役務の調達を禁止し、契約者に対して労働環境、苦情処理体制、違反行為への罰則などを含むコンプライアンス計画を策定するように求める法律の制定

・企業が人権尊重へのコミットメント、事業における労働者の人権順守、そのための行動、評価、情報開示を求める法律の制定

 

持続可能な社会の実現に向け、国は人権を保護し、企業は人権を尊重しなければなりません。ビジネスにおける人権侵害のリスクは、子ども・若者、サプライチェーンの末端で働く人、外国人労働者など社会で弱い立場にいる人たちに発生しやすくなっています。このような人たちは、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動への影響をより大きく受けがちです。また、人権侵害があった場合、救済措置もきちんと講じる必要があります。

ACEはこれからも、関係するステークホルダーの方々と連携して、日本企業が国内外で児童労働に加担することがないように、そしてビジネスにおける人権保護促進のために活動していきます。

※ACEが提出したパブリックコメントについては、こちらの活動報告をご覧ください。https://acejapan.org/info/2020/03/28968

  • Pocket
    LINEで送る

  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2020.10.22