G7とG20へ政策提言活動を行いました

G7とG20へ政策提言活動を行いました

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各国持ち回りで毎年開催されているG7サミットとG20サミットに対して、市民社会はグローバルなネットワーク、C7とC20を結成して政策提言を行っています。2022年に開催されたG7エルマウ・サミット(ドイツ)とG20バリ・サミット(インドネシア)に関するACEの活動を報告します。

G7サミット(主要7カ国首脳会議)とG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)は、各国持ち回りで毎年開催されていて、2022年はG7がドイツ、G20はインドネシアがホスト国でした。首脳会議の他に財務大臣、外務大臣、労働雇用大臣などの会議も行われます。NGOなど市民社会組織は、C(Civil)を頭に付けて、C7とC20というグローバルなネットワークをつくり、首脳に向けて政策提言書を提出しています。また、課題ごとに大臣に対しても政策提言を行います。2019年に日本がG20をホストした際に、ACEはSDG 8.7 ダイアログを開催し、労働雇用大臣会合に関わる政府の人たちを通して労働雇用大臣への働きかけを行いました。

SDG 8.7 ダイアログについては、こちらをご覧ください。
G20 労働雇用大臣宣言にも「児童労働撤廃」が盛り込まれました
G20大阪 首脳宣言に「児童労働撤廃」が盛り込まれました

G7サミットでの児童労働への取り組み

G7サミットでは、2021年6月の首脳共同声明で貿易大臣に対してグローバルなサプライチェーンにおける強制労働撤廃に向けた協力や取り組みのための分野を特定するように指示が出されました。
続いて10月に発表された貿易大臣共同声明では、グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を特定し、防止し、撤廃するための提言を支持すると表明されています。さらに、附属文書A「強制労働に関するG7貿易大臣声明」で、児童労働、強制労働、人身取引を終わらせるという過去のコミットメントを再確認すると述べられています。

G7:
フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ&欧州連合(EU)

市民社会からG7・G20への働きかけ

NGOなど市民社会組織は、G(Government)の代わりにC(Civil)を頭に付けて、C7とC20というグローバルなネットワークをつくって、G7とG20に政策提言を行っています。また、児童労働、教育、保健、ジェンダーなど個別の課題に特化した働きかけも行います。

ACEは児童労働に取り組んでいますので、労働雇用大臣が第一の対象ですが、首脳や貿易大臣に対しても、世界のNGOと連携して政策提言しています。

G7首脳に対して4つの提言(2022年6月)

最悪の形態の児童労働のひとつ、強制労働に取り組んでいるアメリカ、イギリス、オーストラリアなどのNGOとG7の首脳に対して次の4つの提言を行いました。

  1. グローバル・サプライチェーンにおける強制労働を予防、特定、撤廃するために、データを共有し、模範となるような取り組みに基づいた提言をつくる会議を開催すること
  2. G7加盟国が今後締結する貿易協定や貿易優遇措置などには、強制労働の使用を禁止し、基本的人権の尊重を求める条項を含めること
  3. 人身取引や強制労働に取り組みための新たな資金を確保すること
  4. G7加盟国の間で強制労働に取り組むための法律の最低基準を統一し、必要があれば新たな法的枠組みをつくること

G7貿易大臣に対して4つの提言(2022年9月)

貿易大臣会合開催を前に、オーストラリアのウォーク・フリー財団による強制労働と児童労働に関する政策提言書に賛同しました。

  1. 強制労働と児童労働に取り組むための法律の最低基準をG7加盟国の間で統一し、必要があれば新たな法的枠組みをつくること
  2. 情報やデータ共有のための仕組みをつくり、強化すること
  3. 人身取引、強制労働、児童労働に取り組むための新たな資金源を特定すること
  4. G7加盟国が新たに締結するすべての貿易協定には、強制労働と児童労働の使用禁止、デューデリジェンスとコンプライアンスの最低基準を求める条項を草案すること

(注)人権デューデリジェンスとは、企業活動において児童労働、強制労働、長時間労働、賃金の未払いなど人権侵害のリスクについて調べ、リスクを分析、評価して適切な対策を立てて実行すること

2022年のG7の共同声明

このような提言書を首脳・大臣会合の前に発表し、会合後に発表された共同声明では、児童労働と強制労働についてG7が引き続き取り組んでいくことが明記されました。

・2022年5月の雇用大臣会合の共同声明では、同月に南アフリカのダーバンで開催された第5回児童労働撤廃世界会議で採択された「ダーバン行動要請」を受け入れると述べられています。児童労働の根本的な要因に取り組み、バリューチェーンの透明性、デューデリジェンス、救済措置を促進することによって児童労働を撤廃するための行動要請です。

・2022年6月の首脳共同声明では、児童労働に加えて子どもへの性的搾取にも取り組んでいくと明記されました。

・2022年9月の貿易大臣共同声明でも、グローバルなサプライチェーンにおけるあらゆる形態の児童労働と強制労働の撤廃に向けて協力を強化していく意思が示されました。

C20からG20への政策提言

C20は、課題ごとのグループに分かれて提言を作成し、「Policy Pack(ポリシー・パック)」という政策提言書をまとめて、G20開催国の首脳に毎年提出しています。2019年に日本がホスト国となったときには、C20代表を務めたACE代表の岩附由香が、安倍首相に「Policy Pack」を手渡して要望を伝えました。

G20:
フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合(EU)(G7)
に加えて
アルゼンチン、豪州、ブラジル、 中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、 南アフリカ、トルコ

C20 2022 Policy Pack(政策提言書)

2022年のC20では、7つのグループがつくられましたが、児童労働に直接関係するグループがなく、ACEはSDGsと人道主義(SDGs and Humanitarian)というグループに参加しました。新型コロナウイルスや紛争を受けて、特に弱い立場にいる人たちへ社会的保護を提供することを訴えました。

SDGsと人道主義のグループからは、次の3つの柱で提言しました。

  1. レジリアンス(回復力)への投資と人道的な資金調達
  2. 移住労働者の保護と送金費用の削減
  3. 柔軟な社会的保護の強化

3点目の社会的保護の強化では、特に弱い立場にいる人たちへの社会的保護の拡充を求めました。脆弱な人たちとして、難民、障がい者、人身取引や児童労働のリスクがある子どもたち、移住労働者、無報酬で介護をしている人、社会経済階層の底辺にいる人たちが挙げられています。

ドラフトの段階では、「人身取引や児童労働のリスクがある子どもたち」は入っていませんでした。そこで、ACEはコロナ禍で学校が閉鎖されたり、家族の経済状況が悪化して、労働を余儀なくされている子どもたち、そして紛争下のウクライナなどで人身取引の被害者となっている子どもたちの存在を指摘しました。最終版(C20 2022 Policy Pack(政策提言書))では、「人身取引を含む児童労働のリスクにさらされている子どもたち」を特に社会的保護が必要な人たちとして明記してもらうことができました。

G20バリ首脳宣言

2022年11月に発表されたG20バリ首脳宣言において、「我々は、働きがいのある人間らしい仕事の推進と児童労働及び強制労働の撤廃にコミットしている」という一文が入りました。「児童労働撤廃へのコミットメント」は、2017年からG20首脳宣言に含まれていましたが、昨年は触れられていませんでした。しかし、今年は復活して盛り込まれました。


世界の政治のリーダーたちに対して私たちができることは限られています。直接会ってお願いするなどの可能性は低く、このように志を同じくする仲間たちと「政策提言」という形で精一杯働きかけを行っています。ACEからの提言が受け入れられるときもあれば、そうでないこともあります。しかし、「どうせ無理だろう」とは思わないで、チャンスは逃さず、ひとつひとつ対応していくことが大事だと考えています。地道な活動ではありますが、この瞬間も辛い想いをして働いている子どもたちの声が届くように、私たちも声を挙げ続けていきます。

これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします!

         

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2022.12.26