【ガーナ便り】地域の力で子どもを守る – 子ども保護委員会の取り組み
こんにちは、伊藤愛です。
ACEはガーナのカカオ生産地で、危険な労働にさらされている子どもたちを守り、教育を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」を実施しています。
3月、ガーナを訪れ、スマイル・ガーナ プロジェクトを卒業した2つのコミュニティを視察しました。訪問した学校では、子どもたちが笑顔で迎えてくれました。授業のことを尋ねられて恥ずかしそうに答える子、来客に興奮して飛び跳ねる子――その様子を、子ども保護委員会(CCPC)のメンバーが目を細めて眺めていました。
この風景を目にしながら、「この子どもたちの安心は、コミュニティの見守りがあってこそ成り立っているのだ」と実感しました。今回は、そんなCCPCの活動を中心に、ガーナの子どもたちを守るスマイル・ガーナ プロジェクトの取り組みをご紹介します。
子どもを支える地域の仕組み「子ども保護委員会」
CCPCは、児童労働の防止と子どもの保護を目的としたコミュニティのボランティア組織です。メンバーには、村長、クイーンマザー(女性の地域指導者)、宗教指導者、教員、議員などが参加しており、コミュニティ全体で子どもたちを支えています。

CCPCメンバーとスマイル・ガーナ プロジェクトスタッフ
CCPCは、定期的に地域を巡回し、児童労働に従事している子どもがいないかを確認するとともに、不登校の傾向がある子どもの家庭を訪問します。
例えば、次のようなケースがあります。
• 母親が市場で働く間、幼い弟や妹の世話をするために学校へ行けない子ども
• 学用品や十分な食事を与えられず、学習環境が整っていない家庭
CCPCは家庭訪問を通じて、それぞれの家庭の事情を把握したうえで、ニーズに基づいて、学用品の提供など適切な支援策を検討したり、子どもを学校に行かせるように保護者を説得したりします。
しかし、コミュニティだけで全ての家庭を支援するには限界があります。学校環境の改善や農家の収入向上には、行政や外部団体との連携が不可欠です。そのため、スマイル・ガーナ プロジェクトでは、CCPCと郡の行政機関との連携を強化するサポートを行なっています。例えば、CCPCに対して、コミュニティ活動計画の策定と更新を支援しています。コミュニティの課題やニーズ、優先事項を活動計画として文書化することは、必要な資金の見積もりや、行政機関や外部団体からの支援の獲得にも有効です。
コミュニティのリーダーたち
CCPCには、地域社会を支える重要なリーダーたちが参加しています。彼らはそれぞれの立場から、子どもたちの保護や教育の向上に貢献しています。
村長
ガーナには伝統的な統治制度が根付いており、各地域には首長がいます。伝統法に基づく首長の権威と制度は憲法でも保障されており、彼らは、土地の管理や社会秩序の維持、地域の発展に関与し、政府の施策の実施にも重要な役割を果たします。村長は母系制に基づいて選出され、その権威は地域社会で強く尊重されています。

クイーンマザー
クイーンマザーは、村長の助言者であり、コミュニティの母とも呼ばれ、女性のリーダーとして社会福祉や教育、女性支援などに取り組んでいます。児童婚の防止、孤児の支援、HIV/AIDS予防など、政府だけでは手の届かない課題にも積極的に対応しています。近年は、クイーンマザーの地位向上の動きもあり、意思決定プロセスに積極的に関与するようになっています。

宗教指導者
ガーナの多くの地域では、キリスト教、イスラム教、伝統宗教が共存しています。CCPCには、これらの宗教の代表者も参加し、地域の結束を高める役割を担っています。例えば、訪問したコミュニティにはイスラム学校があり、イスラム教徒の子どもたちが通っていました。ガーナでは宗教間の寛容性が高く、互いの祝祭を共に祝う文化があります。

教員
CCPCには学校の校長や教員も参加し、子どもたちの状況を日常的に把握しています。ガーナの地方では、教員は地域の信頼を集める存在です。家庭と学校の橋渡し役として、単なる授業の指導者ではなく、子どもの成長を見守る大切な支援者でもあります。保護者は教員に子育ての相談を気軽に持ちかけ、教員は家庭を訪問して子どもの指導や保護者との話し合いを行っています。

議員・地区委員
ガーナの行政構造は、中央政府の下に州、郡、町村、地区という地方自治の単位があります。CCPCには、町村選挙区の郡議会議員や地区委員会(最小の地方政府部門)の委員も重要なメンバーとして参加しており、郡の中期開発計画に各コミュニティの開発に向けた活動を組み込む架け橋となっています。 その他にコミュニティ内のユースグループや女性グループ、PTA、労働組合といった組織の代表もCCPCに参加しています。

ガーナ訪問を終えて
CCPCのような地域ぐるみの支援は、近年の日本ではあまり見られないのではないでしょうか。たとえ子どもや家庭が困難を抱えていたとしても、地域で情報が共有されることは少なく、多くの場合、家庭と学校あるいは自治体の間で対応が求められることが多いように思います。
一方で、私が幼少期に過ごした田舎町では、近所の人々が自然に子どもを見守る文化がありました。 学校から帰ると、仕事で不在の母の代わりに近所のおばさんがおやつを持ってきてくれたり、バスの乗客のおじいさんが弟を保育園まで連れて行ってくれたり――そんな忘れかけていた温かい記憶が、ガーナでの光景と重なり胸が熱くなりました。
スマイル・ガーナ プロジェクトは、みなさまのご支援により、CCPCの活動を通じてガーナの子どもたちが健やかに成長できる環境づくりを今後も続けてまいります。これからも、ガーナの子どもたちと、彼らを見守るコミュニティの人々の声や姿をお届けし、みなさまと共にガーナや日本の子どもを見守る社会について考えていきたいと思います。
引き続き、みなさまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。
ガーナの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2025.04.21
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