インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2010報告(3)

インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2010報告(3)

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2010年度スタディツアー報告の最終回は、ILO南アジア地域事務所とタラ・プロジェクトの訪問記録です。

ILO(国際労働機関、以下ILO)とは

1919年に設立され、政府、労働者、使用者の3者で構成される労働に関する国際的な専門機関です。現在181カ国が加盟し、主に労働者の権利を守ることを目的とした活動を行っています。1992年から、児童労働をなくすための技術協力プロジェクトILO-IPEC(児童労働撤廃国際計画)を行っています。

ILO南アジア地域事務所への訪問

スタディツアーでは、ILOの南アジア地域事務所を訪問し、ILO-IPECによるインドでの取り組みについて担当者から話を聞きました。インドでは1992年から、政府と共に児童労働が集中した分野、地域で活動を行っています。
今年から、ILOは新たに「集中的な児童労働対策プロジェクト(英語名Converging Against Child Labor Project)」を開始しました。これは児童労働が多い特定地域10か所で、子どもを労働から救出して教育を支援し、またその家族の支援を行うものです。政府による児童労働対策や初等教育普及だけではなく、家族の雇用確保や職業訓練などの政策を活用して包括的に取り組みます。中央、州、地方レベルの政府間や、社会パートナー(雇用者、労働団体、NGOなど)と連携して、持続可能な実施体制を構築しようとしています。効果的な成功モデルを開発して、将来的には他地域・国へ波及することをめざしています。
ILO南アジア地域事務所の職員に話をきく参加者

ツアー参加者から出た質問とILO職員による答え

Q1.集中的な児童労働対策プロジェクトで、対象者48,000人の子どものうち、直接受益者19,000人を児童労働から救出するという目標値は、どのようにして決めたのですか?
A1.「国勢調査やILOによる調査などによる働く子どもの数についてのデータに基づいて、地方政府の関係者との話し合いで決まりました。対象地域では危険有害な労働についている子どもが19,000人いることが分かっています。」

Q2.インドでは都市部への人口移動が問題だと言っていましたが、それは親だけが働きに出るのですか、それとも家族全体で子どもも一緒に移動するのですか?
A2.「州によって異なりますが、ほとんどのケースでは家族全体で移動します。」

Q3.インド政府が児童労働を禁止・規制する法律の施行について、これから必要なことは何ですか?
A3.「法律はありますが、まだ実施が不十分です。きちんと規制できるよう政府の関係機関が能力強化されることが必要だと思います。しかし、法律だけでは 児童労働はなくせません。児童労働の原因は、貧困、社会格差、教育の遅れ、農村と都市の人口移動など様々にあるので、それらの児童労働を生む仕組みにそれ ぞれ対処しなければなりません。」

Q4.家族への支援とは、具体的には何をするのですか?
A4.「貧困家庭の親に対して職を与えたり、職業訓練をしたりします。あとは、教育の大切さについて意識を高めます。そのためにPTAとの連携などもしています。」
今年から始まったばかりのプロジェクトだっただけに、参加者からはたくさんの質問が出ました。ILOに、より大きな働きを求める声が多かったです。

タラ・プロジェクトへの訪問

タラ・プロジェクトとは

経済的に不利な状況にある職人の自立を支援するため、1970年代から活動を始めたフェアトレード団体です。低所得の職人や住民たちの雇用をつく り、フェアトレード商品の生産や販売、職業訓練の提供や技術訓練、生産者の家族の生活向上などに取り組んでいます。児童労働問題に対しては、児童労働防止 のための啓発やアドボカシー活動、子どもの教育支援(学習センター、教育費支援)などを行っています。
訪問ではまず児童労働のビデオを鑑賞しました。強制労働されている子どもの様子を見て、おとながきちんと働く環境を作ることの大切さやフェアトレー ドの重要性を学びました。団体の活動に関する説明を受けた後は、実際に作業場を見学させてもらいました。女性たちが作る色とりどりのアクセサリーや、新聞 紙などを用いたリサイクル商品など、様々な商品がありました。
代表のシャルマ氏の、「あなたたちも消費者として(商品の)取引に関わっているんですよ」という言葉には、参加者の誰もがハッとさせられました。

アクセサリーを作るスラムの女性たち(タラ・プロジェクト) ツアー参加者による振り返り

参加者の感想

  • ILOがもっと中央政府に働きかけるべきである。核開発の経費を少しでも社会福祉、児童労働にかけるべきだと思う。(60代男性)
  • タラ・プロジェクトによるフェアトレードやマイクロクレジットの活動などに共感しました。こういう活動から変えていくことも必要だと思いました。(20代女性)
  • タラ・プロジェクトで言われた「あなたたちはフェアトレード・ソルジャー(戦士)です。」という言葉が印象に残った。児童労働をなくすにはソルジャーになるくらい強い意志が必要だと気付かされたから。(20代女性)
  • 私たちも、児童労働によって生み出された商品を知らずの内に買っている可能性があり間接的に関わっているのかもしれないということに気づきました。(20代男性)

ツアーの振り返り

訪問を終えた後、ツアー参加者全員でツアーの振り返りを行いました。それまでに訪問した団体で学んだことを整理し、感想や疑問などを共有しました。 その後、個々人で「児童労働をなくすためにこれから自分にできること」を考えて紙に書き、全体で発表しました。「児童労働についてもっと勉強する」、「今 回のツアーで学んだことを周りの人に話す」、「自分も当事者であるという意識を持つ」、「フェアトレード商品を買う」など、たくさんの決意表明がありまし た。

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  • カテゴリー:子ども支援
  • 投稿日:2011.01.12