2023年7月31日
【岩附通信vol.30】 インドとACEと私
私事ですが、この度現在居住しているインドから日本に本帰国することになりました。
帰る間際に次のインドでのプロジェクトのための視察、また現在行っているピース・インドプロジェクトの視察に行ってまいりました。6月12日の児童労働反対世界デーにあわせて現地からの配信をさせていただいたので、それにご参加いただいた方もいらっしゃったかと思います。イベントの後は村の中をマーチし(写真)、久しぶりのマーチに昔を思い出しました。
あらためて振り返ってみますと、インドとACEは深いつながりがあります。
「児童労働に反対するグローバルマーチ」がきっかけではじまったACEですが、その提唱者はインドの人権活動家、カイラシュ・サティヤルティさんです。カイラシュさんのこのムーブメントがなければACEはなかったといっても過言ではなく、このインド発のとびぬけた発想から、ACEは始まっています。
グローバルマーチ以前の1990年代後半、現在の副代表である白木、小林の2名は明治学院の児童労働ゼミでインドに来訪しており、私も国際子ども権利センターのスタディーツアーでインドに来ておりました。そうしてACEをたちあげ、インドのグローバルマ―チに3人で参加し、それを参考に日本で実施したという経緯があり、それぞれ個人的にもまたACEの立ち上がりとしてもインドは深い関係がありました。
さらに。
事務局次長の成田はインドに留学しソーシャルワークを学んでいて、アドボカシー事業チーフの太田は博士論文をインドの児童労働をテーマに執筆。それ以外に、ACEが実施したインドスタディーツアーに学生として参加経験があり、現在スタッフになっているもの2人、また学生時代にACEの学生チームでインドと交流していた(かつ子どもの頃インドに住んでいた)人1人、と、実はインドとの繋がりをもつメンバーが多いのです。
そんなACEではありますが、現在行っている、ピース・インド プロジェクトが8月で終了することになり、2004年頃から続いてきたインド国内での支援事業について、そのあと、ACEとしてインドの事業を継続するか?終了してガーナに集中するか?それとも?という話を昨年の合宿で行いました。
結論は、インドの事業は形を変えて継続するということになりました。合宿で話し合って団体としての決断したことですが、どうしてもやめるという風に舵を切ることができなかった自分もいます。
団体として持っている人的、金銭的リソースが限られていることを考えれば、国際協力としてはガーナに集中したほうがいいという結論に至ってもおかしくはなかったのです。きっと、優れた経営者ならそう判断していたのでしょう。
でも出来なかった。
それでよかったのだろうかという想いも心の片隅に残しながら、この6月の2回の出張を経て感じているのは、個人的にも、ACEとしての事業展開としても、インドとのつながりを保つことの意味、意義です。
ひとつは、これは極めて個人的なレベルの話になってしまいますが、なんだかんだ言いつつやっぱりインドが好きで、魅了されているということです。奥深さ、長い歴史(占領され、その後独立を勝ち取った国の経緯)、多様さ、複雑さ、混沌としているようでオーガニックに変化、適用する様。ひょえーっ!と思うことも含めて、一旦それを受け止めている自分がいるような気がします。
もうひとつは、インドにある格差が依然と大きくあり、児童労働、貧困を含め構造的な課題が存在するということです。
昔、飛行機の中で会った人とインドで仕事をしていると話した時”How can you stand the poverty?”(「どうして耐えられるの?あの貧困に?私は耐えられないわぁ」という感じ)と言われたことがあります。
その時に心の中で強く「私は目をそらさない」と誓ったことを、最近思い出しました。
人口は増え、経済はこの20年で見違えるように発展し、大きく変わっていくインドは、日本よりも希望に溢れているのでは、という考え方も出来ます。私の中でもそういう風に感じたり、インド人の人に話したりしている時もあります。
でも今月、インドで活動するいろいろな人たちと話をしていく中で、インドなりの難しさもいろいろあることもうかがえました。そして街のあちこちで、働いたり、物売りをしたり、物乞いをしたり、路上で生活している家族を見ながら、そこにある構造はあまり変わっていないという感覚も持ちました。
そうした構造を変えることは、巨大なインドですので私たちだけで出来ることでは到底ありません。しかし、もっと小さい単位、日本でいう自治体レベルで、具体的な取り組みを進めることで子どもの権利を保障する仕組みを強化することはできるかもしれないという感覚を持ちました。
そしてもうひとつは、子どもの権利という観点から日本の事業、また児童労働フリーゾーンという意味でガーナの事業との相互作用を期待できるのではないかということです。
実は子どもの権利保障という観点では、インドは日本よりも整っている部分があるなということも感じました。24年前に、国際子ども権利センターの職員としてやりとりをさせていただいていたバンガロールにあるNGOの方を訪ね、お話させていただいたのですが、日本には子どものコミッショナーがいないと言ったらびっくりされました(苦笑い)。この団体では、子どものが自治体の施策に参加する仕組みを、カルナータカ州内で実践として進めてきて、それから条例化するということを行ったそうです。24年ぶりの再会なのに話しだしたらお互い止まらず、むしろこちらが教えてもらうことのほうが、多いような状況でした。
またピース・インド プロジェクトの視察で地域の労働管理事務所をおうかがいしたときには、児童労働は減少してきたが、自治体内での部署間の連携が課題という話も聞きました。地域単位で児童労働をなくしていく取り組み、エリアベースの取り組みについては、ガーナで自治体向けの研修なども行ってきていることもあり、地域のボランティアとして活動する方々含め、どのようにその人たちの能力やモチベーションを高めていくかということも共通の課題だと感じました。
そんな形で中身の濃かった6月、そしてインドでの生活を終えようとしているところです。
日本では暑い日があったり梅雨らしいジメジメがあったりあまり過ごしやすい季節ではないかと思いますが(バンガロールはそういう意味では高地のため比較的涼しく快適でした)、夏本番に向けてどうぞお体にお気をつけてお過ごしください。そしてまた日本で直接お目にかかれることを楽しみにしています。
PS ACEでは、現在クラウドファンディングを実施しています。既にご寄付いただいた方も多くいらっしゃり、ありがとうございます!
7月31日までの実施なので、いまちょうど折り返し地点なのですが、ご支援いただいている人数が伸び悩んでおります。内容がわかりづらかったか、子どもの権利を前に打ち出すことはまだ日本では受け入れられづらいのか、と悩んでおりますが、そもそもこのクラウドファンディングのサイトに来て下さる方の数自体があまり多くないというのが現状のようです。
これからまだ1か月、クラウドファンディングが続きますので、みなさまが応援いただいている団体がいまこのような取り組みをしているという情報を、お友達のみなさまにお伝えいただけたらありがたいです!
【クラウドファンディング】
「子どもの権利をあたりまえに!今、ACEと一緒に未来へのアクションを」
https://readyfor.jp/projects/ACE_SDGs2023
2023年6月 ACE代表 岩附由香
※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。