【岩附通信vol.36】 「ボスはパーパス」への道は楽しく険しい | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

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岩附通信

2024年1月30日

【岩附通信vol.36】 「ボスはパーパス」への道は楽しく険しい

岩附通信32

今年もご支援を継続していただき、ありがとうございました。 
2023年も残すところあと数日となりましたが、みなさまの一年は、いかがでしたでしょうか? 

今年1月の岩附通信では、組織づくり、ティール組織や、その背景にある考え方についてお伝えさせていただきました。
一人ひとりが自律的に動ける組織=自己組織化であり、そのコンセプトは「ボスはパーパス」。
上司に言われたことをやるのではなく、パーパスにどう貢献できるかを考え自分で動くことを前提としています。 

「ACEの活動の成果を出しやすくし、1人1人のスタッフの持つ力を最大限に引き出す結果につながることを意図し、その進化を遂げる2023年になることを期待しています。」
と今年1月の岩附通信に書かせていただいたのですが、振り返ってみると今年はそうした意図を現実化するための様々な仕掛けを検討し、着手し、試行をはじめた年だったと思います。 

(1)自己組織化、ホラクラシーの導入 
研修を経て2月からこうした制度を本格導入したことにより、ミーティングのやり方が抜本的に変わりました。
各自の役割に名前が付き、何を日常的に行うのかが明文化され、お互いその立場にたってやりとりを行うことで、誰が何をしているのかが明確になり、また意思決定の透明性が高まりました。
また業務に関わることについての新たな提案や、難しさを感じている点を表明する場が設けられていることで「なんとなく気になってはいるけどいいづらい」ようなことを出す場も出来たかなと思います。

まだ組織の中での運用は濃淡ありますが、私個人としては既に実践している会社さんなどから学ぶことが多く、ソース原理など新しい考え方にも触れる機会になり、大きな刺激を受けた1年でした。 

(2)ティール組織にあう人事制度の設計と試行 
組織内部のことになりますが、自己組織化に向けて重要だったこの部分についてもこの機会にお伝えさせてください。

自己組織化組織は、給与を自分たちで決める、そして全職員の給与が公開されるという形をとる組織がままあり、ACEもそのような形にシフトしていくべく、どのような給与体系が望ましいかを外部コンサルタントの方に入っていただきながら模索してきました。
このプロジェクト名はずばり、「誰も見たことがないけどいい感じの組織」(笑)。  

みなさまからいただいている大切なご支援からも出させていただいているACEスタッフの人件費。
透明性と納得性を保ちながらいかに自律的に決めることが可能か、私自身このプロジェクトに関わり悩みながらも新たな形に落とすことができました。

長年、人事制度・給与体系はどのような形が望ましいのか悩みつつ手が付けられていなかったので、ACEらしい、組織の行動規範であるACE’s WAYをベースに作られた評価軸により、今後ますますこの新制度がスタッフの力を出しやすく、能力を高めやすくなるよう祈りを込めて、新しい制度をいよいよローンチさせます。 

(3)自分の「願い」を自覚し、表現できることのパワー 
ここから少し事業の話になるのですが、いまACEで進めている「沖縄うまんちゅ子どもの権利推進プロジェクト」の話をさせてください。

このプロジェクトは沖縄の子どものWell-beingの向上を目指し子どもの権利研修やNVC(非暴力コミュニケーション)をベースにした研修等を沖縄で行ってきました。
ACEが組織内の研修でお世話になってきた渋谷聡子さんを講師にお招きし沖縄でも研修を親子向け、若者向け、学校の先生向け、子ども支援をしている人向けに行ってきました。

その中で思い知ったのが、NVCを通じて自分のニーズや願いに気づくことのパワフルさです。
そしてそれが表現されるとき、周りの人も含めてその人に関する理解が深まり、より1人1人が強くつながる感覚が生まれる場面が事業の中で何度かありました。

個人的にはそうした場が持つ、人の力を解き放つ力に改めて気づかされた年でした。
そして、そうした実践をACE内で地道に2014年頃から重ねてきたことが、いまのACEを形づくっているということも、実感した次第です。 

もちろん、全てが上手くいったわけでもありません。
事業面では特に見込んでいた事業収入が入らなかったり、事業運営上の大きな課題が持ち上がったりと、経営者として頭を抱えるようなモーメントも正直ありました。
また、本当にたくさんの方にご支援をいただきありがたい一方で、拡大していく事業には収入が追い付かず、財政的に厳しい側面は今も続いております。
今年度は組織のあれこれにかなり時間を費やし、割と険しい道をある意味楽しみながら追求し、結果的に組織形態としては大きく舵を切ることができました。来年度は、それが軌道にのり、成果に結びつく1年にしたいと思います。 

そして、組織としてどこに向かうのかにとって重要な、「ボスはパーパス」のACEのパーパス(目的、存在意義)も、11月の総会でご承認をいただき、新しいものになりましたので、こちらでも報告させてください。 

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ACE新パーパス: 
世界の力を解き放つ ―子どもたちに自由の力を、すての人に変革の力をー 
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12月はじめにこのお披露目パーティーを開催させていただきましたが、そこに来ていただいた方から「これまで話は聞いていたけど、あの場に行ってやっとACEのことが理解できた。あそこに集っていたような企業な、いろんな人の力を解き放っていく組織なんですね」と言っていただき、とても嬉しかったです。

私たちだけでは世界の大きな課題は変えることはできなくても、周りの関係するステークホルダーとして存在する人や組織に気づきをもたらし、その力に気づいて、共に行動してもらう―そういう存在として、これからも役割を果たしていきたいと思っています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。 

最後に、ACEにとってはとても大きかったニュースをひとつ共有させてください。 

来年1月から、ガーナにおける児童労働フリーゾーンに関する業務をJICAからの業務委託で実施することが決定しました。
待ちに待った、以前実施した調査をふまえての、次の実践フェーズです。
この仕組みが、2025年にSDGsの撤廃目標期限を迎えてしまう世界の児童労働の撤廃への前進に向け大きな足掛かりと示唆を生むことを信じ、願っています。 

実はこう見えて(!?)「何一つ満足に出来ず今年が終わってしまう」と自分の力の足りなさに落ち込んだりすることもある私ですが、こうして振り返ってみると自分が思っていた以上の成果と頑張りがあったような気がしてきたので、ぜひ、1年をふりかえり、頑張ってきた自分に共感をしてあげてください。
そうだ、みんながんばった!!!とねぎらって、また新たな年をフレッシュな気持ちで迎えられたらいいなと思います。 

今年もご支援をいただき本当にありがとうございました。 
良いお年を、そして、2024年も楽しく、豊かで実りの多い1年となりますように!  

2023年12月 ACE代表 岩附由香 

※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。 

 

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