【岩附通信vol.37】 「ネットワークやるより自団体のことを」を越えて | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

岩附通信

2024年2月28日

【岩附通信vol.37】 「ネットワークやるより自団体のことを」を越えて

岩附通信37

こんにちは、岩附です。
新しい年はじめての通信になります。今年もどうぞよろしくお願いします。
まず能登半島地震で被災されたみなさまに心よりのお見舞いを申し上げます。
年初から、能登半島地震、飛行機事故と「おめでとうございます」と軽やかにはいいづらい重たい雰囲気の幕開けでしたが、関東はやっと冬らしい冬の気温になりました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

私は先週は、1月29日(月)に開催された、外務省と厚生労働省が共催する児童労働に関する意見交換会の準備などに勤しんでおりました。
この会議には「児童労働ネットワーク」の事務局長として出席しました。
その関係で過去の実績を調べていたら、自分が書いた児童労働ネットワークに関する記事に遭遇し、「そんなこともあった・・!」と思いだしたので今日はそのことを書きたいと思います。

ACEは様々なテーマのNGOネットワークに入っております。
関与の濃淡はもちろんありますが、その中でもACEが設立に深くかかわり今も事務局を務めているのが「児童労働ネットワーク」です。

児童労働ネットワークを立ち上げたのは2004年。
2002年ぐらいから準備会合は始めていましたが、当時はACEで有給で働く専従スタッフはいませんでした。
私岩附と、現副代表の白木が、別のフルタイムの仕事をしながらの準備を続けていました。
 
準備会合は確か18時半くらいからだったのですが、主催者である私たちが遅れてしまうこともあったりし、準備会合につきあっていてくれた方々の忍耐に感謝という感じでした。
 
そうしてようやっと立ちあがった2004年。
とある国際協力NGOに、このネットワークに加盟してくれないか?のお願いに行ったときのことです。

一通り説明をしたあと、 「岩附さんの団体は、規模どれくらいなの?」と聞かれました。
当時、前年度の決算は100万円くらい(まだNPO法人化もしていませんでした)だったのでそう伝えると、 

「ネットワーク作るより、まず、自分の団体をちゃんとやったほうがいいんじゃない?」

と言われてしまいました。
労働組合のみなさん、NGO仲間のみなさんと、2年近く、さんざん議論を重ねて作った趣意書や規約を持って臨んだ勧誘活動、大失敗です。
それで泣きそうになりながら帰るという出来事がありました。
 
当時のACEのバリュー(団体の価値観・価値基準)には「ネットワークを最大限に活かします」というものがありました。
小さな団体でも、集まれば大きなインパクトを出せるのではと信じて、立ち上げようとしたネットワーク。
 
「そんなネットワークより、自分のことちゃんとしなさいよ、それからなんじゃないのネットワークは?」というご指摘に、
「ごもっとも」と思ってしまう自分がいる一方で、「いや、絶対、ネットワークに意味があるんだ」と思っている自分もいて。
「こんなネットワークを立ち上げるなんて、やっぱり私たちには無理なんだろうか」と自信を無くしてしまう出来事でした。
 
多分ACEのことを心配してくださってのご意見で、あれから20年近くたった今私が同じような相談を受けたら、もしかしたら同じように思ってしまうかもしれません。
でも、当時の何とも言えない気持ちも、ありありと思い出せます。
 
2024年で20年目となるこの児童労働ネットワーク、実績も確実に残しています。
児童労働の取組強化を求めるための署名活動でこれまでに集めた署名数は246万筆にも上ります。
また、昨年4月に倉敷で行われたG7労働雇用大臣会合に合わせて、世界の労働組合代表(L7)と市民社会(C7)との共同声明を出すこともできました。
こうしたことが実現できたのも、これまでのACEのアドボカシー活動の中で労働組合や関係政府のみなさんとの関係を築いてきたからです。
また、このG7をきっかけに、これまでの署名活動で求めていた「Alliance8.7」(アライアンスハッテンナナ:児童労働や強制労働に関わる国際枠組み)への日本の加盟も、昨年実現することができました!

日本国内の子どもの権利を守るためのネットワーク「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」を立ち上げた時も、その2年後にこども家庭庁の議論が持ち上がるとはその時はまだ見えていませんでした。
でも、そうした政府の議論が持ち上がって、何かアクションを起こそうと思った時に一からネットワークを築いていたのでは遅いのです。

先日、「関係性資本」という言葉を目にし、ああ、こういう視点は大事だなと思いました。
ちょっとググってみると、「人が大きなことを成し遂げられるかどうかは、他者の協力を得られるかどうか。その意味で、『私は何ができるか』という人的資本との対比として『私は誰の支援を得られるか』という関係性の充実度を表す概念が関係資本である」んだそうです。

実はネットワーク化とはこうした資本を蓄積していくことだなと思います。
そして大きな目的に向かって、個々の団体がそれぞれの活動に従事しながらも、共通の目的に向かい協働してアクションを起こし、連携して外へと働きかけていくことだなと思います。

結局そういうことが自分が好きなんだなというのも、振り返ってみると思います。
みなさまからご支援をいただいているおかげで、こうして大きな目標に向かってネットワーク活動が出来ることの喜びと幸せがあります。
本当にありがとうございます。

年のはじまりは不安が募りましたが、今年の終わりはどうか多くの方が安心して年越しができますように。
今年もどうぞ、ACEの活動への参加、ご協力を引き続きよろしくお願いいたします!

2024年1月 ACE代表 岩附由香

※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。 

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