2014年1月14日
リレーインタビュー Vol1 白土真由美さん
2014年もよろしくお願いします!
新年最初のACE代表ブログ更新は、新企画!
リレーインタビュー「ACEの舞台裏“ここだけの話”」をお届けします!
記念すべき第1回は、いつもたいへんたいへんお世話になっている、白土真由美さんです!
今日(2014年1月14日)、森永製菓から日本のナショナルブランドとして初めて、国際フェアトレード認証ラベルのチョコレートが発売されます。そのチョコレートには、2009年からACEが支援してきたガーナのカカオ生産地域で採れたカカオが使われています!
そんな、ACEと森永製菓との協働のきっかけをつくってくださった白土真由美さんに、これまでの協働と活動の意義を振り返っていただきました!(白土さんには、現在「ACE戦略アドバイザー」としてご助言いただいてます!)
白土真由美さん((株)電通 サステナビリティ研究部 元部長)
「本質的解決策に挑戦するロールモデルとしての意義と課題」
「企業の社会的責任」と翻訳されてきたCSR。しかしその本質は、持続可能な社会へのインパクトという長期的視野から現業を俯瞰し、負荷を最小化させつつ正荷を最大化させる事によって、さらなる企業成長を目指す経営戦略にほかなりません。
笑顔に満ちたサステナブルな地球社会実現のためには、環境、社会、経済のトリプルボトムラインの好バランスが必至とされる中、グローバル化したサプライチェーンのバランスを目指すフェアトレードというコンセプトが生まれました。
先進国の一翼を担って来た筈の日本ですが、欧米各国に比較してフェアトレード商品自体が少なく売り上げも伸び悩んでいます。日本企業の多くは、ノブレスオブリージュとして利益の一部を社会還元してきた歴史が長い一方、現業との密接な因果関係があり、将来の事業リスクを未然に防ぐ可能性の高い戦略的CSRテーマへのコミットは、企業の原罪に関わるタブーとして敬遠され、フェアトレードの定番である食品にさえナショナルメーカーのブランドはこれまで見当たりませんでした。
このような状況下、森永製菓が今年発表したフェアトレードラベル認証チョコレートには、非常に大きな歴史的意義があるのですが、この機会に私の視点から一連のプロジェクトを振りかえってみたいと思います。
森永製菓1チョコfor1スマイルは血の滲む企業努力の賜物
「子どもたちの笑顔のために」森永製菓は、美味しいお菓子をつくるだけでなく、恵まれない海外の子どもたちの笑顔のための活動にも積極的な利益還元を図ってきました。
創業110周年記念事業として、購入1商品あたり1円が寄付に充てられる「1チョコfor1スマイル」キャンペーンは事業部主導で始まった販促プロモーションでしたが、単価の低い商品の薄利から1円を捻出するのは血の滲むような企業努力だった筈です。
にもかかわらず、キャンペーン当初の支援先と、カカオ産業の原罪とされている児童労働との因果関係が見えにくかったために「日本で一番カカオを輸入してきた企業として、児童労働に対してどう向き合うつもりなのか?」。グリーンウォッシュならぬブルーウォッシュを危惧し、反発を強める関係者が沢山いたのも事実で、ほかならぬ私もその一人でした。
その後、天の引き合わせか、キャンペーンについて森永製菓さんから意見を求められる機会を頂き、「子どもたちがターゲットのお菓子、しかも関係者の多い老舗のナショナルメーカーでは、敢て寝た子を起こすようなテーマには取り組めないとは思うのですが」という非常に不遜な姿勢で「本来であれば、企業成長におけるCSR上の最大のリスクであると同時に、チャンスにもなり得るカカオ産業の原罪に早急にコミットすべきでしょう。」と提案して辞しました。
提案のみの業務は枚挙にいとまがなかったので、後日改めて招聘され、何回かの打ち合わせを通じて、具体的な手法についてご相談を頂いた時は、嬉しい裏切り?にあったような軽い放心状態でした。
国産NGOではパートナーとしてはまだ力不足かな?と思いつつ、早速複数団体の調査に取り掛かったところ、NPO/NGOのネットワークが広く、ACEの活動に注目していたプライベートなパートナーからの強い推薦があって今日に繋がるご縁を頂きました。
国際フェアトレード認証ラベルチョコレートの誕生
NGOに疎い企業、企業に疎いNGO。顔合わせ当初は、お互い微妙な緊張状態で目線が交わることも全くなく、ハラハラさせられる場面が続きましたが、プロジェクト実現に向けたさまざまな壁を共に乗り越える過程で、両者の眼差しは次第に共通の未来に向かって注がれる様になり、その後の沢山の偶然や必然が少しずつ繋がって今年の成果に繋がった気がします。
丁寧な組織合意を繰り返しながら、強かに粘り強くプロジェクトを推進してきた森永製菓の方々はもちろん最高殊勲ですが、最も評価したいのは、社会と企業のサステナビリティに資する本質的なCSRに正面から向き合ってプロジェクトのバージョンを上げ続け、多くのステークホルダーの意識啓発を商品自体を通じて図ってきたことです。
マッチングギフトキャンペーンの売上寄付に始まり、まさかの原罪へのコミット。さらに、メーカーとしての本質的な解決策として、支援地区産カカオを使ったチョコレートの生産販売に挑戦した際には、キャンペーンを牽引してきたフラッグシップのダースにもそのカカオを加味し、より多くの生活者と共に喜びを分かち合うチャンスを提供してくれました。そして今年、満を持しての国際フェアトレード認証ラベルチョコレートの誕生は、アジアのメーカーとしての初の快挙です。
そして傍らには、児童労働が生まれる負の連鎖を食い止めようと地道な活動続けてきたACE、商品化に向けた流通課題に挑戦した商社、棚を開けてご協力下さった流通、購入というアクションを通じて応援の意志を表す生活者、生活者の意識啓発に携わる教育関係者やメディア関係者など、多くのステークホルダーの存在がありました。確かな志を持って活動してきた一つ一つのマルチな点が、プロジェクトを形づくる点線となり、さらに今回の国際フェアトレード認証ラベルチョコレートによってハッキリとした実線になっていったのです。
「人権」「サプライチェーン」これからのCSRにもとめられるもの
かつてプリウスが、環境という課題と商品による解を提案して社会全体に大きな啓発を与えたように、日本では馴染みの薄かった「人権」という課題の存在と解を示すメルクマールとなる可能性をも、このプロジェクトは秘めています。
実線を太く重ね、さらに多くのカカオ関連企業、食品企業、生活者関連産業、組織団体らとの積極的な連携を通じて、面とし立体として行くことができ、児童労働を生み出す要因となっている社会的課題を解決してゆくためのインパクトもより大きくなり、スピードも速まる筈です。
そもそも企業の社会貢献とは何でしょうか?
東日本大震災発災直後、被災地に灯油を届けるためにサプライチェーン上の様々な企業で働く社員たちが死力を尽くしていたことは記憶に新しいところです。
良質な事業サービスを滞りなく社会に提供すること自体が既に素晴らしい貢献なのですが、事業継続のためには一定の利益確保や社会的評価が必要であり、実は私たち自身が無意識に行っているブランド選択がこれらの評価に密接に結びついているのです。商品やサービスの購入、最適な利用とリサイクル、株主、従業員、取引先などマルチプロファイルを持つ私たち自身の判断、選択、行動が、企業が正しい事業活動を推進するために大きな影響を与えているのです。
企業が勇気あるチャレンジをしたとしても、その商品サービスがマーケットから支持されなければ旗を下ろさざるを得ません。繋がった実線を力強く塗り重ね続け、面に広げてゆくためには、私たち自身のアクションが欠かせません。
次は私たちの社会的責任が問われる番です。サステナブルな地球社会実現に向けた、あなたのミッション参加を歓迎します!
文:白土真由美(ACE戦略アドバイザー:元電通総研)
白土さん!ありがとうございました!白土さんをはじめ、さまざまな方の協力があって、今日のACEがあると実感しています。
今後もリレーインタビューで、ACEを応援してくださっているみなさんをご紹介していきますので、ぜひお楽しみに!