「健康と児童労働について考えよう in ガーナ報告会」開催報告
2015年8月16日(日)、東京の市ヶ谷にあるJICA地球ひろばで「ガーナで健康診断!健康と児童労働について考えよう in ガーナ報告会」を開催しました。報告会では、参加者同士で自己紹介をした後で、ACEガーナ・プロジェクト マネージャー近藤より2015年6月8日から10日にかけてガーナのカカオ生産地域で実施した健康診断と健康ワークショップの報告を中心にガーナでの活動の様子を報告しました。報告会には、学生の方から社会人、ご年配の方までたくさんの方にご参加いただきました。ご参加ありがとうございました。
【イベント概要】ガーナで健康診断!健康と児童労働について考えよう in ガーナ報告会
ガーナ・カカオ生産地域における健康と児童労働の関係とは?報告:ACE近藤】
まずACEの近藤より児童労働やACEの活動紹介、ガーナでの活動報告を行いました。ガーナで活動を開始した背景や活動の様子、クラウドファンディングサイト「READYFOR?」を通じて、健康診断の実施費用を募った背景についてご紹介しました。
READYFOR?|ガーナカカオ生産地で大人が健康的に働けるように健康診断を実施
ガーナのカカオ生産地では、カカオ豆を卸売業者に売るまでの加工作業が行われています。このカカオ豆の生産現場での児童労働が世界的な問題となっています。子どもの発育に負担の大きい作業や危険な作業があります。カカオ豆を生産している地域の人は、カカオ豆が何になるのか、誰が食べているのかも知らないと言います。また、ガーナは降水量の多い南部と少ない北部で分かれています。カカオ豆は、高温多雨の地域で栽培されるため土地の痩せた北部から南部へ子どもが連れてこられることも多いといいます。
カカオ生産地域での児童労働問題の解決を阻害する要因
カカオ生産地で児童労働の問題が生じる背景にはさまざまな要因があります。例えば、家庭の貧困や学校が未整備なこと、ガーナ政府からの支給が不十分なこと、カカオの価格を決める仕組みなどが深く関係しています。
ACEは、こうした問題を解決するために2009年に「スマイル・ガーナ プロジェクト」を開始しました。ガーナで活動している理由は、日本が輸入するカカオ豆の約8割がガーナ産だからです。私たちの生活にガーナは深く関係しています。
活動を通して解決してきたこと
「スマイル・ガーナプロジェクト」を通して、これまでに250人もの子どもを児童労働から救出してきました。救出した子どもの一人であるゴッドフレッドくんは、中学校の卒業試験で郡1位の成績をとり、政府の援助によって高校へ進学しました。将来の夢は、村で最初のお医者さんになることです。新たに活動をはじめた村でもすでに200人の子どもたちを児童労働から解放し、学校へ通えるよう支援してきました。
健康診断とワークショップを通じて分かったこと
クラウドファンディングサイト「READYFOR?」を通じて募った資金で、健康診断と健康ワークショップを2015年6月8日~10日に実施しました。
健康診断・ワークショップ実施の背景には、健康改善が児童労働の改善に大切な要素になるのではないかという理由があります。子どもの頃に児童労働をして健康に影響を及ぼしても医療設備が未整備のため満足な治療を受けられません。そのため将来、健康に仕事をすることが難しく、働けるのが子どもしかいなくなり、児童労働が生じます。
また、ガーナなどアフリカでは、病院や医療に対する信頼がとても低い現状があります。そこで、健康についての意識向上のための健康診断ワークショップを実施しました。健康診断・ワークショップでは、具体的に血圧測定や、尿検査、マラリア検査、問診、健康保険加入手続き、健康ワークショップを実施しました。
ACE近藤は、参加者の反応や医療スタッフのフィードバックから「医療に対する信頼」という壁を取り払うことが今回の大きな成果のひとつだと報告しました。
働く子どもたちの事例から考えるケーススタディー
近藤からの報告を踏まえて、参加者同士で意見交換をしてもらいました。4~5人のグループに分かれて、2人の子どもの事例を通して、「なぜ健康問題が児童労働を起こすのか?」「どうすれば、児童労働をなくせるのか?」という問いかけに対する答えを考えてもらいました。
1人は、ジャネット・サホちゃんです。ジャネットちゃんは、元々学校に行っていましたが、お母さんの病気の為に中退。学校には行かずにお母さんの看病と身の回りの世話をしていました。
もう1人は、メアリー・ニャメちゃんです。メアリーちゃんはガーナの北部出身で、母親が病気の為に学校をやめました。医療費を賄うために、ニャメさんのところに労働者として送られました。
ケーススタディーで出た意見
問「なぜ、健康問題が児童労働を起こすのか?」
- 母親が働けなくなった時のサポートシステムが不足しているから
- サポートシステムがあっても十分に認識されていないから
- 近所に学校がないから
- 安全で衛生な飲み水がない など
問「どうすれば、児童労働をなくせるのか?」
- 母子家庭へのシェルターを設置する
- 地域同士の相互扶助を促進する助け合いの仕組みをつくる
- 生産が活発な北部にカカオ以外の産業を生み出
- 個人が意識向上させる
- 教育費が払えなくなった家庭のための奨学金制度を設ける
- 保険や社会保障の仕組みを知り活用されるようにする など
ケーススタディーで紹介した2人の周りに、児童労働がしてはいけないと認識しているおとながいたため、働かずに学校へ通うことができました。
ケーススタディーに登場した2人のその後について、詳しくはコチラ。
質疑応答
ワークショップの後は、参加者から質疑応答をいただきました。ワークショップ実施まで健康保険に加入している人が少なかった理由は何か。病院、医療スタッフへの信頼性が低い背景は何か。今後も別の地域で支援を行うべきだが、READYFOR?以外の確実な資金調達方法はないのか、などたくさんの質問をいただきました。たくさんのご質問ありがとうございました。
報告会を開催して
今回の報告を通して、児童労働と健康とのつながり、健康診断・ワークショップの実施によってどのような効果があったのかを知ることができました。アフリカでは、医者に対する不信感が強い現状があるという報告は新鮮でした。ケーススタディーからは、“児童労働はなくすべき”という認識を社会に高めていくことや、児童労働者とACEなどの児童労働の撤廃へ向けて動く団体や人がつながることで、児童労働をなくす一歩につながるのではないかと考えさせられました。日本で実施したREADYFOR?が現地の活動に繋がる様子、貢献する一助となる様子を報告から感じることができました。
ACE アドボカシー事業担当インターン 中尾はるか
今回は「健康」をクローズアップしたが、とても新鮮な経験だった。これまで経験したことない新たな試みをしたことで、自分の仕事を見つめなおす機会にもなった。そして改めて「児童労働」はさまざまな開発の問題と密接につながっていることを認識させられた。「環境」、「経済」、「安全保障」などの分野とも密接にかかわっており、ぜひそれらの視点から児童労働問題をとらえてみることも検討したい。参加者はみなとても積極的で、グループワークと発表についてはこちらも勉強になった。特に「保険」と「奨学金」についての提案は、ぜひガーナの行政関係者につたえ、議論してみたいと思う。
ACEガーナ・プロジェクト マネージャー 近藤光
ガーナの子どもたちを笑顔にするために
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- カテゴリー:報告
- 投稿日:2015.08.24