児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ

企業の社会的責任(CSR)

2020年10月29日

EUがいよいよ人権デューデリジェンス義務化の法案を公表

 

EUデューデリジェンス義務法制化に関する動きのまとめ

 昨年の2019年11月に国連ビジネスと人権フォーラムに参加したときに感じた「各国の人権デューデリジェンス法制化の波」の、大きな波がいよいよやってきました。EUが法制化することをその時点でかなり濃厚な状況でしたが、調べてみるとすでに法案の原案が含まれているレポートが公表されています。

EUデューデリジェンス法案の原案を含むレポート(2020911日付け)

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/JURI-PR-657191_EN.pdf


 

これについては、日本語の情報があまり探せなかったのですが、これまでの経緯も含めてまとまっているのは以下です。

ECCJのニュース(20204月)

https://corporatejustice.org/priorities/13-human-rights-due-diligence

 このニュースによると、

・2020年4月に「サプライチェーンのデューデリジェンス要件」に関する調査が公表(※1)
・EU Commissioner for Justice のDider Reynders氏がイベントで義務化にコミットと発言(※2)
・EU議会が同時並行で関連するレポートを作成中
・2021年に議会に提案される予定

(上記ニュースの関連深いところ抜粋)

(※1)

https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/8ba0a8fd-4c83-11ea-b8b7-01aa75ed71a1/language-en

 (※2)

https://corporatejustice.org/news/16806-commissioner-reynders-announces-eu-corporate-due-diligence-legislation

  とのことです。

925日時点での以下記事が一番詳しそうです

https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=d82de6bb-4a9c-40ef-9572-e87f0b9bd8c8

※関連文書へのリンクあり 

これに対し、米国NGOヒューマンライツウォッチはリコメンデーションをウェブで公開しています

https://www.hrw.org/news/2020/06/24/recommendations-new-eu-legislation-mandatory-human-rights-and-environmental-due

EUの法案は人権だけでなく環境のデューデリジェンスも含めたものになっており、この法案が成立すると、EU加盟国は2年以内にそれを国内法に適用しなくてはなりません。

世界は動いている!

日本は?というと、日本もようやく、ビジネスと人権指導原則の国内行動計画を発表しました。2016年に作成すると表明してから、ACEも様々なプロセスに参加してきました。パブリックコメントもしました。これについて言いたいことはいろいろあるのですが、とにかくこの計画が出来たのは第一歩。「計画」といいつつ今やっていることの羅列では・・・というツッコミは私だけでなく多くの方々が思っていることだと思いますが、外務省が取り纏めて他の省庁にお伺いをたてながらやるとなると、こうしかならないのだと思います。ビジネスと人権については、政府がビジョンがあまりなく、決まっていることもないので、踏み込んで書くのが難しいのかな、と想像します。

ACEや児童労働ネットワークでは、ビジネスと人権に関する人権デューデリジェンス、サプライチェーンの透明化を促進する法整備、また、公共調達に関する法整備を「検討する」ということをこの行動計画に入れてほしかったのですが、残念ながらそれは入りませんでした。しかし、EUでもこのような流れが来ている中で、日本にもいつか来ると信じて、タイミングを待ちつつ、今後も世界の動きに注目していきたいと思います。

 

アドボカシー/政策提言企業の社会的責任(CSR)児童労働

2016年10月28日

私のアドボカシー活動、2010年の出来事を振り返ったときに。

今朝、政策提言系の宿題をやっていたところ、泣いてしまいました。
 
その原因は、宿題の関係で2010年ぐらいに活発だった「社会的責任に関する円卓会議」の過去メール。
 
ちょっと前段の説明が長くなりますが・・・
 
社会的責任に関する円卓会議は、「円卓会議は、多様な主体が対等な立場で参加し、政府だけでは解決できない課題に協働して取り組むための新しい枠組み」なのですが(少なくともHPにそう書いてある)、NPO/NGOセクター代表として運営委員に選出してもらい、「地球規模課題の解決への参画」ワーキンググループの事務局をACEが務めておりました。政府も主体のひとつとして参加しており、その他金融、消費者、事業者(経団連、同友会、商工会議所)、労働組合(連合)、NPO/NGOセクターから代表が出ている会議体でした。
 
で、児童労働に関してこの会議で合意にもっていこうとした政府の取り組みとして「労働・人権に配慮した調達促進の元となる法令の整備と行動計画の策定、それに基づく労働・人権に配慮した製品の利用の促進についての各種施策」という提案をACEがして、ワーキンググループで合意、資料として事務局へ提出したら、運営委員会の会議の前に政府側から「それは引き取る省庁がないので無理」といわれ、削除を求められ、結局誰かの助け舟で「政府への提言」として会議資料に記載することになったという経緯があります。
 
事実上「児童労働についてはあなたが出したどの案も政府はやりませんよ」と言われたも同然。最終的な協働戦略には、政府がやることだけ何も書いてないのもおかしいので、当たり障りのない記述が残っています。
 
私としては、2010年時点のこの頃から、サプライチェーンの児童労働に対する法整備を政府にしてほしいとアドボカシーしてたんだな、という自分自身のその時点での確信があったことの確認ができました。
 
で、なんで泣いたかっていうと、政府側から「これは削除」って言われてそのことについて比較的心情が通じていた霞が関の某お役人様とのメールのやりとり。
 
「児童労働は残念です。ACEの円卓会議との関わり自体をどうしようかと思うほど、政府の(*行動計画として)記述がないのは私にとってダメージが大きいです。と落ち込んでいても仕方がないのでこの学びを今後に活かしたいと思います。こちらも対策が遅くなったことは否めません。」
 
と私が書くと、それに対し、
 
「岩附さんや植木さんが、ボランティア的な形で、多大な貢献をされていることに頭が下がる思いです」とはじまり、でもそのような事情を知らない役所の同僚はDefensiveな反応をしがちで、自分自身で省内を説得して回っても、役人的ロジックで「そんな話は聞いてない」と言われるとなかなか反論しにくく、外から見ているとわずかな修正でも「軌道修正×関与している役人数」を見ると、比較的大きなインパクトがあるもの事実で、きっとフラストレーションやら怒りやら軽蔑やらを感じられていると思うけども、ご容赦ください、とつづき、
「私も立場上言わざるを得ないことは言いますが、それとは別に、改めて感謝と敬意を表する次第です。」
と結ばれているメールを、発見したのです。
 
2010年当時、すごくがんばっていた私(そして植木美穂!当時の資料がきちんと日付が入って残っていることとか、やっぱり素晴らしいよ)、上手くできなかったその時の悔しさ、でもそれに対して理解を示してくれていた政府側の人がいたこと。
 
とにかく、必死にもがいていた自分の足跡を発見してしまい、なんだか涙が出てしまいました。
 
さて、ただいま政府は持続可能な開発目標(SDGs)の政府の活動についてパブコメを募集しています。
 
◎総理官邸SDGs 推進本部 実施指針「⾻子」 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/
◎パブリック・コメント SDGs 実施指針 http://ow.ly/ZAqK305iJUx
 
児童労働は目標8の8.7に2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすとありますが、日本政府の実施指針の骨子、また付表にも、「児童労働」に関しては国内・国外とも一言もありません(性的搾取、人身取引については言及あり)。
また、目標12の持続可能な消費と生産の中に、持続可能な取り組み導入と情報の定期報告について(12.6)、持続可能な公共調達(12.7)に記述がありますが、現状日本の法律としてあるグリーン購入法は環境しかカバーしておらず、政府の調達方針の人権・労働分野については未整備な状態です。でも、今の行動指針付表には「グリーン購入の促進」しかなく、12.6についても「ESG投資の促進等による環境に配慮した事業活動の推進」しかありません。
 
サプライチェーンの人権・労働問題は、またもや置いてきぼりです・・・・(担当する省庁がいないから!)
 
TPPの労働章にも、「全部又は一部が強制労働(児童の強制労働を含む。)によって生産された物品を他の輸入源から輸入しないよう奨励する」って書いてあり、英国奴隷法もできて、いよいよ世界はサプライチェーンの人権問題に向き合おうとしているのに、日本だけ置いてきぼりに・・・
 
5月に来日したカイラシュさんが言っていた3Dが
Dream -big&better
Discover -your strength and opportunity
Do! – Act now!
 
この3Dを胸に刻み、今できることを、やります!
超長文になってしまいましたが、ぜひご一緒に!
企業の社会的責任(CSR)

2016年8月12日

英国の現代奴隷法 Modern Slavery Act がスゴイ

先月、英国在住のCSRのスペシャリスト、下田屋さんが事務所まで来てくれ、事務局長の白木と3人でランチしながら情報交換をしました。

その際に話題になった、Modern Slavery Act 2015。企業のサプライチェーンに強制労働、人身取引、債務労働(借金のかたに働かせられる)などの”奴隷的”に働かせられている人がいないかどうかを、企業がチェックし、それを公表しなさい、というもの。

詳しくは、ぜひ以下の下田屋さんの解説を読んでください。

http://sustainablejapan.jp/2016/07/13/modern-slavery-act/22928

これがいいなと思ったのは「情報公開」を求める法律であることです。一定規模の英国の企業は2016年4月以降に開始する会計年度において、「奴隷と人身取引に関する声明」を公表しなくてはなりません。

つまり、自身のサプライチェーンにそのような奴隷的労働があるかどうかを確認したか、それをウェブサイトなどに公表することが求められています。

下田屋さんと話していて、この法律が素晴らしいなと思った点を、下田屋さんが上記記事に書いてくれているのですが、そこだけ引用すると

「また、もし奴隷と人身取引に関して、企業がその内容を確認するステップを踏んでいない場合には、その手立てをしていないことを声明に書かなければならないとしている。

 この英国現代奴隷法は、企業が法令順守をしなかった場合には、無制限の罰金が科せられるとしているが、この法令の興味深いところは、実際にはその罰則により企業に取り組みをさせるという仕組みでないところである。ちなみに英国政府は、対象企業が「奴隷と人身取引に関する声明」に関して要求事項を満たしているかについては確認しないとしている。

 この法令が求めている仕組みは、英国において市民社会、NGOのプレッシャーが強いことを利用して、企業に透明性を強要し、市民社会、NGO、大学の研究者などがWeb上の声明を精査するという市民社会の監視の目を使用するところである。

 また、当該企業は他社の声明と比較することにより、それぞれの企業がお互いにどのように実施しているのか、何をする必要があるのかなどを相互に理解して、次のステップに活用させることができる。これらにより、各産業でこの問題を真剣に取り組みをさせることを考えている。」

いい意味で企業同士の競争を促すこと、そしてそれを市民社会がウォッチする、そこまでを想定して法律が出来ているって、スゴイです。実際的。

下田屋さんと話していて、こういう法律が日本でも出来たらいいのに、そんな企てをしたくなった夏の日の午後でした。

 

企業の社会的責任(CSR)

2014年4月19日

CSRとCSVについてのつぶやき

企業の社会的責任にACEとしても注目をしはじめ、具体的に事業の中に取り込んでいったのが2007年頃からですが、あれから7年、CSR(企業の社会的責任)を巡る環境は、CSV(ハーバード大学教授マイケル・ポーター氏が作った概念)登場によって変化してきているように思います。

CSRとCSVの定義については、他に譲るとして、理解の整理を自分なりにしようとすると、いくつかの誤解が
あるのではないかと思いました。CSRの関係者と意見交換をする中で、このような誤解が生まれているのではないか、、、という話しに何度かなったので、メモしておきたいと思います。

誤解その1 CSR=CSVだ!

 CSRとCSVはもともとの出所が違うし、CSV的な活動があることがCSRを果たしているとは、いえないと思います。CSVをやっているからコンプライアンスはどうでもいい、とはもちろんならないわけです。

誤解その2 本業を通じてやるのはCSVだけ

 実はCSRの議論の中にはずっと「経営戦略との統合」=CSR経営の必要性が叫ばれてきました。そこまでなかなかいきつく会社がいなかったことは事実かもしれませんが、CSVが「本業の事業の中で社会貢献する」ことをうたっていることは、別にCSRでも言ってきたことで、新しいことではありません。

このテーマについては、今後ももう少し自分自身も学びながら、整理したいと思います。

この人に会って話を聞いた!企業の社会的責任(CSR)日々是発見

2014年3月24日

かわさきコンパクト・フォーラム(3/20)で末吉さんの話を聞きました

3月20日(木)、かわさきコンパクト・フォーラムに参加してきました。

国連グローバルコンパクトに自治体として署名している川崎市は、独自にかわさきコンパクトなるものを作っています。
http://www.kawasaki-compact.com/

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お知らせ・報告企業の社会的責任(CSR)

2014年3月6日

近況+3月17日 ACE主催「ビジネスと児童労働」セミナー 参加者募集中!

ブログ、大変ご無沙汰していましました。

認定NPO法人ACEの岩附由香です。

最近は、5月10日のコットンの日に開催する「エシカルファッションカレッジ」の準備や、児童労働ネットワークが行うキャンペーンの準備や、ACEのファンドレイジングのことや、なんやかんやでかなり頭がいっぱいいっぱい
な日々です。

今年は心を入れ替えて?!もう少し、このブログも更新していきたいと思っています。

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企業の社会的責任(CSR)

2013年12月2日

発想を変え、正しい理解で、前向きに取り組む -児童労働撤廃に向けて求められる企業の3つの姿勢-(2013/12/5セミナーご案内)

▼▼12/5 「ビジネスと児童労働」連続セミナー詳細 ▼▼       

https://acejapan.org/event/seminar131205//

いよいよ2013年12月5日より、ACEの新しい企画、「ビジネスと児童労働」連続セミナーを開始します。

いまなぜ、このようなセミナーを企画したのか、その意図と、いま企業に求められる姿勢を、お伝えします。

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企業の社会的責任(CSR)

2010年10月6日

てんとう虫チョコがキユーピーの清掃活動でも活躍!?

ACEの活動をご支援くださっているキユーピー株式会社さんが、清掃活動50回目を記念して、ACEが販売している「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」を参加者に配布してくださいました! ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)

2010年2月4日

企業との協働紹介ページ作成

昨日、NHK総合「ゆうどきネットワーク」の番組の一環で、社会貢献でビジネスをしようとしている企業が寄付先候補としてNPOを尋ねるというシーンの撮影にACE事務所へ来られました。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)

2010年2月1日

リコーのステークホルダーダイアログに参加

本日、株式会社リコーのステークホルダーダイアローグに参加してまいりました。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)日々是発見

2009年10月15日

ヨーロッパ出張Vol.4 世界カカオ財団の会議に出席

昨日から世界カカオ財団(World Cocoa Foundation)のPartnership Meetingに出席しています。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)

2009年7月8日

ISO26000セミナー

昨日、ISO26000のセミナーに参加してきました。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)

2009年7月6日

円卓会議のウェブサイトが完成

安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」のウェブサイトが出来ました! ‥続きを読む

お知らせ・報告企業の社会的責任(CSR)

2009年4月17日

円卓会議の運営委員になりました

安心・安全で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」が発足しました。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)児童労働

2009年3月5日

キャドバリーのミルクチョコがフェアトレードに

ビッグニュースです!チョコレート業界大手キャドバリー社が、主力商品の「Cadbury Dairy Milk」を2009年夏までにフェアトレード認証を受けると2009年3月4日に発表をしました!!!!! ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)

2009年2月17日

日本企業のCSR調達の進捗度

突然ですが、日本企業はどれぐらいCSR調達を進められているのか、みなさんご存知ですか? ‥続きを読む

NPO経営/NGO組織運営企業の社会的責任(CSR)

2008年9月25日

NGOの企業向け企画コンペに参加しました

企業30社以上を前に、6つのNGOがプレゼンを競う企画が、日本フィランソロピー協会のご協力を得て実現しました。これはJICAのNGO人材育成研修の一環でもあります。 ‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)日々是発見

2008年5月15日

先人に学べ

G8サミットへ向けてキャンペーンの周知や戦略作りが本格化する中、ACEで新たにCSRプロジェクトの新規立ち上げの準備を進めています。その相談に乗っていただいくため、C社のS社長を訪ねました。 ‥続きを読む

NPO経営/NGO組織運営企業の社会的責任(CSR)

2008年4月3日

NPO/NGO社会的責任向上ネットワーク(仮)

今日、表題のネットワークの立ち上げ総会に向けた準備会に参加してきました。

‥続きを読む

企業の社会的責任(CSR)児童労働

2006年8月17日

アメリカの全国消費者連盟訪問とISO26000

今日は全国消費者連盟(National Consumer’s League、以下NCL)を訪問し、その代表であり、児童労働連盟の共同議長を務めるリンダさんにお話を伺った。 ‥続きを読む