岩附通信 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) - Part 2

児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ

岩附通信

2023年4月30日

【岩附通信vol.27】マラソンとNPOは似ている?

岩附通信_2023 (メールヘッダー)


いつもご支援ありがとうございます!ACE代表岩附です。

先日ご報告させていただきましたが、ジャパンSDGsアワードの本部長(内閣総理大臣)賞を受賞いたしました。
これも、毎年のご支援の継続があったからこそ、ACEが存続し活動を続けられてきたからだと思います。
心より感謝申し上げますと同時に、改めてこの賞を分かち合わせていただきたいと思います!!

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(写真出典:首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202303/17sdgs_award.html)

さて、今月はじめに東京都内で開催されたマラソン大会では、海外・国内合わせて200名を超えるチャリティーランナーのみなさまが、暑すぎず寒すぎないほどよい天気の中、東京の街を疾走される姿を沿道から応援させていただきました。
私が2019年にACEのチャリティーランナーとしてマラソンを走らせていただいた際には朝から冷たい雨でしたので、特に海外からの参加者は「3年越しで待ちに待った・・・!」という方々が多い中、天候に恵まれて本当によかったです。
自己ベストを大幅に更新した!という方もいらっしゃいました。

アメリカ、中南米、イギリス、ドイツ、ケニア、オーストラリア等、本当に世界各地のランナーから集まったACEチャリティーランナーのみなさんと、お話させていただきました。
数ある寄付先NGOの中でなぜACEを選んでくださったのかを伺うと、「病院で働いていて、いろんな子どもを見てきたから」「子どもこそは大事にしないとね」等、お一人お一人の想いがありました。
「ACEはいい仕事をしているね!これからも頑張って!」と応援をいただくことも多かったです。

ふと、マラソンとNPOは共通点がありそうだと思いました。

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まず一つ目は自主性。
走れメロスのような状況ではない限り、「マラソンを走りたい」という意思がある方々が参加されるマラソンは、「今の世界のここの部分をもうちょっとなんとかしたい」という意志を持つ市民が自主的につくるNPO活動と通じるものがあると思います。

二つ目はプロセスの大事さ。
マラソンはハードなスポーツなので、アスリートではない限り練習をしないでいきなり42キロを制限時間内に走りきれる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
この大会を走る!と目標を決めてから逆算して徐々に走る距離を伸ばしていったり等、その日に向けてのプロセスが重要です。
NPOの活動も、多くの積み重ねがあって今があります。
今回ジャパンSDGsアワードの賞をいただけたのも、これまで児童労働に関する日本国内での啓発、直接支援、企業との連携やアドボカシー等の積み重ねによるものかと思っています。

三つ目は応援が力になること。
これは私自身がランナーとして感じたことでもありますが、本当に応援が力になります。
知っている人からの応援はもちろん、知らないひとからも声をかけてもらったり、声援が聞こえると、がんばろう、とエネルギーが湧いてきます。
ACEもこれまで本当にたくさんの方々から、寄付・支援という有形だけでなく、ご縁をいただいたりご紹介をいただいたり、また私たちが多分見えていないところでの評価や推薦など、無形の形も含めて、応援をいただいてきて今があるのだと思います。

チャリティーとマラソンの相性が良いのは、そういう共通点があるからなのかもしれません。
これを機に、ACEのチャリティランナーとして走ってみたい!と思われたら、お気軽にお問合せください。

さて、そんなことを考えているうちに3月はあっという間にすぎ、明日から日本の暦は新年度ですね。
4月から、職場や、保育園・幼稚園や学校(お子さんやお孫さんが)等で新しいスタートを切る方も多いかもしれません。

みなさまが、今年のチャリティーランナーさんのように、穏やかな環境の中、祝福をうけながらさわやかにスタートできるよう、お祈りしています!

2023年3月 ACE代表 岩附由香

※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。

岩附通信

2023年3月31日

【岩附通信vol.26】つながって見えた世界。

岩附通信26

バレンタインですね★
ACEへの問い合わせも増えるこの時期、2009年からはじめた「しあわせへのチョコレート プロジェクト」にまつわるエピソードを今日はご紹介させてください。

2008年に白木と私が初めてガーナに行き、その後白木が中心となってガーナでスマイル・ガーナ プロジェクトを立ち上げました。それと同時に、日本で進めていたチョコレートと児童労働にまつわる啓発活動や、企業との連携など事業横断を含めて「しあわせへのチョコレート プロジェクト」とした枠組みをつくります。

しかしそれを立ち上げた当初、企業連携はゼロ。
そうです、まだ実績ゼロの中ほぼ「願い」と「理想」でたてた企業との連携でしたが、その後森永製菓さんの「1チョコfor1スマイル」の支援パートナー(対象商品の売り上げに対し1円の寄付になる特別期間が2/14までです。詳しくはこちら:https://valentine.acejapan.org/20230105-2/ )に選んでいただき、毎年ご寄付をいただいていることに加え、今では複数の企業さんからのご寄付をいただけるようになりました。
それに加えて学校、NPO、企業、個人等、本当に様々な方々からのご寄付をいただき、チョコ募金はこのしあわせへのチョコレート プロジェクトを推進する力となってきています。ありがとうございます。

ACEは、個別企業とのパートナーシップだけでなく、JICAが設立したサステイナブル・カカオ・プラットフォームにおいては児童労働に関する分科会の事務局を務め、普段は競合としてしのぎを削る企業さんたちが、児童労働という共通課題に「協働」する場もつくっています。

ACEのガーナでの活動に注目が集まり、様々な国の企業やNGOとの交流が盛んになる中、カカオ栽培がかかえる問題は児童労働だけではないことに私たちは気づかされました。カカオを栽培するには、森を開墾し、カカオの苗を植えなければなりません。森林伐採・環境問題とも関連しますし、そもそも農家の収入が少なく安定しないのは、世界の貿易の中でのカカオ豆の取引の中で、農家が手に出来る収入があまりにも少ないという課題があります。

そのようなカカオ・ビジネスが抱える課題をまとめ、隔年でレポートを発行しているのが、オランダに拠点を置くNGO、Voice network(ボイスネットワーク)です。この度ACEも正式なメンバーとして加盟し、この「カカオ・バロメーター」の日本語版概要を発表しました。
▼詳しくはこちら:ACE|2022年版カカオバロメーターの要約(日本語版)を初めて発行
https://acejapan.org/info/2023/02/348170

このように世界で活動する団体とのつながりは、チョコのプロジェクトだけではありません。今年日本でG7が開催されますが、そのG7に向かって、動き出したC7(シーセブン、CはCivil Society=市民社会の略)でも、児童労働への取組強化を求めた政策提言活動を行うため、世界各国の団体と意見交換をはじめています。

こうして動いて、つながって、あらためて、気づかされたことがあります。
それは、「課題のつながり」と「システム(構造)の変化の必要性」です。

ACEの「児童労働をなくしていこう」というチャレンジに向かって目標を立て、それにむかって動いてきた結果、カカオ業界の直面する課題は児童労働だけでなく、環境、人権、貧困があり、それぞれがまたつながっているということ、それを解決するにあたっては、そもそものカカオの貿易そのものの「システム(構造)」を変えていかないといけないということに気づかされました。いま、欧州で議論されている「環境と人権のデューデリジェンスを義務づける法律」を作るというようなことも、こうしたシステムの変化をもたらすことを意図していると思います。異なる課題に対し、共通のソリューションとなる可能性があるのではないでしょうか。

これは自分たちの活動の経験から「そうかもしれないな」と得ていた感覚が、他の企業、NGO、政府がどのように考え、どう動いているかを知るにつれて「やっぱりそうか」という確信に変わっていくプロセスでもありました。

とはいっても、課題は大きく、日本のいちNGOが単独で解決できるようなものでは到底ありません。それでも、そういう視点を持って活動していくことに意味があると思っています。この難しいチャレンジにしり込みせず、ACEと共に果敢に取り組もうとしている企業や団体がいるというありがたみを感じながら、カカオ農家のみなさんにとっても、ハッピーなバレンタインとなっていくよう、取り組み続けたいと思います。

今日はなんだかちょっと固めの話になってしまいました。
もっとやわらかいバージョンとして、ぜひ、2月中は無料公開しているACE制作の映画「バレンタイン一揆」を、おいしいチョコレートをほおばりながら見ていただけたら幸いです。(高校生以下は無料なので、おこさんとぜひご一緒に!)
▼詳しくはこちら:映画「バレンタイン一揆」期間限定公開2023
https://acemovie2023.peatix.com/
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PS ACEバレンタインキャンペーンのウェブページもぜひご覧いただければ幸いです!
https://valentine.acejapan.org/
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2023年2月 ACE代表 岩附由香

※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。

 

岩附通信

2023年2月28日

【岩附通信vol.25】「ボスはパーパス」

岩附通信25

いつもご支援ありがとうございます!ACE代表岩附です。
今年もどうぞよろしくお願いします!

サポーター・会員のみなさまに、毎月生の声をお届けしたい!と始まったこの岩附通信、2021年は動画、2022年は音声でお届けしましたが、2023年は・・・テキストでメールベースでお届けしてみよう!ということになりました。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

今日は、ACEの組織づくりについてお話してみようと思います。
「ティール組織」という言葉、お聞きになったことありますか?
一言でとても説明しづらく、未だにできないのですが、組織がひとつの生命体のように動く組織のことです。そしていま、ACEは「ティール的な組織への進化」真っ只中にあります。

ティール的な組織の組織構造はいくつかパターンがあるのですが、ACEではその構造として「ホラクラシー」と呼ばれる、ホラクラシーワンという会社が開発したシステムを活用した組織運営を導入することになりました。このホラクラシー導入を「自己組織化」と呼んでいます。

ACEでは、そのための自己組織化研修を昨年11月から開始し、1月で一通りの研修が終わりました。いよいよ、2月から徐々にホラクラシーの運用をはじめていきます。

その運用の前提となるのが「セルフ・マネジメント」。自分で自分の仕事を管理する、といえば当たり前のことのように聞こえますが、言うはたやすく、行うは難し。今回ホラクラシーの前提となる、セルフ・マネジメントのスキルとして、GTD(Getting Things Done)やLOS(Langage of Sapces)という手法を学びました。少しご紹介したいと思います。

まず、今回の自己組織化の考え方は「ボスはパーパス」。そしてパーパスを実現するために「ロール」(役割)があり、そのロールが持つパーパスと果たすアカウンタビリティがあり、それに伴うプロジェクトやアクションがある、という構造ととらえています。

このLOSの考え方は、なにかうまくいっていない!という「テンション」があったときに、それがどの文脈で起きているのかを見つけるのに役立つと思いました。

LOSは4つの部屋にわかれていて
1.オペレーショナル・スペース:日々の業務の進め方について
2.ガバナンス・スぺ―ス:組織全体を眺めたときの役割分担や過不足について
3.関係性のスペース:人間関係の中での期待やニーズについて
4.個人のスペース:自分の物事の受け取り方、内側の感情、反応のパターン

があります。
今感じている「テンション」困りごとを、この4つの切り口で分けてみていくことで、具体的な解決方法が見えやすくなってくる、というものです。

これを聴いて、なるほどなーと思いました。ACEはこれまで、NVC(非暴力コミュニケーション)をベースとした研修を行ってきたので、3と4のスキルは組織としても高まっていると思います。でも、1や2については、これまでこの部分の能力を伸ばしたり、皆で仕事の進め方をそろえたり等はしてこなかったエリアであると思いました。今回の研修ではとくにこの1・2に関係する能力を高めないと、ホラクラシー運営の前提となるセルフ・マネジメントが成り立ちません。

それと関係して、「ローレーションシップ」という新しい言葉も出てきました。
ローレーションシップとは、ロール同士の仕事のしかたで、ロール(仕事)と人を分けて考えるということです。つまり、ロール同士のコミュニケーションと、人としてお互いを大切にするコミュニケーションを分ける、ということです。

たとえば、何かしらの組織内締め切りがあって、それを提出していない人がいた場合、ついつい「○○さんも忙しそうだし、今リマインドするのも申し訳ないかな・・・」とか考えてしまいがちなんですが、そこは「ロール」として、思いやる心とは切り分けて、任務遂行する、ということです。

また、受け取る方も「ロ―ルとしてこの人は発信しているんだ」と受け取る、ということです。

実際にやってみようと思うと、なかなかに難しい場面もあるのですが「ロールとしてお伝えしますね」ということで、お互いいいやすく・うけとりやすくなる部分もあるかな?と思いました。

このLOSの考え方、子育てにもちょっと当てはめて考えられるなぁと思いました。
実は、私の子どもたちは「学校に行きたくない」ということが頻繁にあります。が、特に日本でワンオペをしていて、まだACEが事務所があったころには1.オペレーション上、子どもを1人で家に置いていくことをしたくない という事情がありました。2.のガバナンス上は、一応、「学校に行くのが子どもの仕事」と位置付けているので、その仕事を果たすことが子どもたちには求められています。しかし、3.の関係性のスペースとしては「行きたくない気持ちがあるのはわかったよ」と、気持ちを一旦受け取ります。そしてそのとき、4.個人のスペースでは「子どもの気持ちを優先するか」「自分の仕事を調整するか」「リスクをとって子どもを1人で置いていくか」「子どもを学校に行かせることすらできない私は母親失格なのか・・・」などなど、直面している状況に応じてどの選択肢をとるかの選択と、感情の中でものすごい葛藤が起きています(笑)。

家庭内の「母親」ロールとしては、この頻発するテンションに、日々難しい選択を迫られているわけですが、その判断をするにたっての「ボスはパーパス」なので、、まずはうちの家庭のパーパスを定めないといけないんですね、ということに気づきました。

このような形で、組織運営にあたっていろいろみなで学び・気づきながらティール的な組織に向かっている現状をお伝えさせていただきました。ACEの活動の成果を出しやすくし、1人1人のスタッフの持つ力を最大限に引き出す結果につながることを意図し、その進化を遂げる2023年になることを期待しています。みなさまにとっても実りの多い1年となりますように!

2023年1月 ACE代表 岩附由香

※「岩附通信」は、会員・子どもの権利サポーターの方の特典として毎月1回配信しているコンテンツですが、配信から一カ月以上が経過したものは代表ブログにて一般公開しています。